乳歯だけが生えている時期でも、緊急性があると担当医が判断したら矯正治療を行うことがあります。噛み合わせが悪く、顎の発育に悪影響を与えている場合には積極的に乳歯を動かし、悪い噛み合わせを治します。特に受け口(反対咬合)は、早い時期から治療し、長期間管理する傾向にあります。
永久歯が生え揃うまで矯正治療開始を待ちたいのですが、待っていると成長発育の絶好期を逃してしまうことがあります。そのような時は治療をⅠ期、Ⅱ期の二回に分けて行います。Ⅰ期治療は混合歯列期に行います。主に整形学的治療装置を用い、骨格の不正を正そうとします。顎の発育を押さえたり、あるいは促進したり、顎の横幅を拡大することもあります。この時期はそういうことが可能な時期です。
Ⅱ期治療は、永久歯が生え揃う頃から開始します。主に永久歯の並びを整え、美しく良く噛める歯並びを作ります。
永久歯が生え揃ってから始める矯正治療はこう呼ばれます。特に20歳以降は歯周病の管理が不可欠になってきます。この時期の患者さんには大きな成長変化を見込むことは出来ませんので、I期治療のように、骨格のアンバランスを整えることは出来ません。ブラケットと矯正用ワイヤーで永久歯を動かして歯並びを整えます。
主に成人矯正治療時、骨格のバランスが悪すぎる場合、矯正治療だけでは治しきれないことがあります。このような時は外科手術で顎の大きさやバランスを整えながら矯正治療を行います。例えば、大きすぎる下顎が原因の受け口の治療では、顎の骨を小さくする手術を併用して矯正治療を行います。
歯が抜けた後長期間放置すると、回りの歯が抜けた部分に移動してしまいます。抜けた部分をブリッジかインプラントで治す必要があっても、周囲の歯が動いてしまっているのでは良い結果が得られません。そこで、部分的に矯正装置をつけて、歯を元の位置に動かしてからブリッジ、インプラントといった治療を行うことがあります。
このように、部分的に矯正装置をつけて、限局的に歯を動かすことを、マイナー・トゥース・ムーブメント(MTM)と呼びます。より完成度の高い入れ歯やインプラントを入れるために、高齢者でもMTMで残っている歯を動かすこともあります。